ここで記載している記事は, 全く制御工学を知らない人を対象にしています. 記載内容は制御工学の役割や重要性を伝えることを第一としてます.
制御工学とは入力を決めるための学問である
制御工学と聞いて何を思い浮かべましたか? 制御なんて聞くと多くの人がプログラミングや電子工作を思い浮かべるかもしれません. しかしこれらは, 制御を実現するための手段でしかありません.
では制御工学とは何でしょう. この問に対して簡単に回答すると, 制御工学とは入力を決めるための学問と言えると思います. ここで言う入力とは, 例えばモータを動かすための電圧や, 自動車を加速させるためのアクセル, 減速させるブレーキといったものを指します.
アクセルの踏み具合を決めるのは難しい
では, 自動車を例に制御工学の役割を考えましょう. 現在停車している自動車をまっすぐ走らせ, 100m先の目標停車位置で停車させたいとします. これを人が行なうにはどうすれば良いでしょうか? 目標の停車位置が前方にあるのですから, まずアクセルを踏むでしょう. どんどん自動車が加速していきますが, 速度が速いと思えばアクセルを緩めるかもしれません. 目標停車位置が近づいてくれば, ブレーキを踏んで減速し停車します.
この動作を自動で行なうためには, アクセル及びブレーキの操作を行なわなくてはいけません. アクセルやブレーキの操作を自動で行なうのはプログラミングの役目です. ですがアクセルやブレーキをいつどれだけ踏めばよいのか考える必要があります. この踏む量をどうすればよいか考えるのが制御工学です.
ここでこんなことを思ったりしませんでしたか? 人が実際に操作して, そのときのアクセルやブレーキの踏み具合を記録し, 全く同じ動作を自動車にさせれば良いと. しかしここには2つの問題があります. 1つ目の問題は, 全く同じ動作をしたとしても, 結果は異なるということです. 例えば自動車に当たる風が追い風のときと向かい風のときでは違う結果になりそうだということは想像できると思います. 2つめの問題は, 人が操作したときの動作が最適とは限らないということです. ベテランの運転手二人にそれぞれこの課題をやってもらったとすると, それぞれアクセルの踏み方は異なるはずです. うまく自動車を動かすために, 最も良いアクセルの踏み方を考えなくてはなりません.
制御工学で重要なのは物理と数学
制御工学は入力(アクセルの踏み具合)を決めるための学問であるといいました. そのためにまず決めないといけないのは最も良い操作とはなにかということです. 例えば, 自動車を発車させてから100m先の目標停車位置で停車させるまでの時間は短いほうが良いでしょう. しかしだからといって急発進, 急停車は危ないためしたくはありません. これらの要望をバランスよく実現する操作を最も良い操作としましょう.
つぎに, 最も良い操作を考えるためには, どれほどアクセルを踏めばどれほど急発進になるのか, 目的停車位置に着くまでどれほど時間がかかるのか知る必要があります. ここで必要になるのが物理です. そして物理を駆使して最も良い操作を決定するためには数学が必要となります.
制御にどれほど物理や数学が必要かは制御する物や実現したい動きによって異なります. ただし少なくとも言えることは, 高校レベルの物理や数学では全く歯が立たないということです.
制御工学はまだまだ奥が深い
制御工学は入力を決めるための学問でありますが, このように入力を決めることは簡単ではありません. 今回は簡単な例でしたが考えるべきことはまだまだあります. 例えば, 風などの外からの影響をどれほど受けるのか, 暴走したりしないか, エンジンの性能が劣化しても大丈夫かなどなど.
もし制御工学に興味が湧いたのであれば, 「倒立振子」を調べてみてください.
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